VOL.61 生理痛 ~その2~
32歳の女性、
「生理の初日と二日目に、下腹部が冷えて絞られるような強い痛みがある。痛みは、温めると楽になり、冷えると悪化する。寒がりではないが、手足が冷える。月経周期は35日くらい。以前、他の漢方薬局で血府逐お湯を奨められて服用してみたが無効だった。」
との事。
血府逐お湯が出番となる「気滞血お証」にしては、経前乳脹や刺痛或いは拍動痛などがみられません。「気滞血お証」ではなく「実寒証」と判断し、安中散と四物湯を一緒に服用していただくことにしました。
あれほど辛かった生理痛が軽くなり、「ウソみたい。」と不思議そうです。
生理痛は、漢方では、「経行腹痛」「痛経」等ともいい、月経期或いは月経前後に、下腹部に耐え難い痛みが生じる事をいいます。
比較的、漢方薬がよく使われている疾患の一つですが、思ったほど効果が上がっていないのが現状です。
その理由は、使われているのが、血府逐お湯や桂枝茯苓丸に代表される血液の流れを良くする活血剤ばかりだからです。
活血剤は、血液の流れが滞っていることによって痛みを生じる「血お証」には有効ですが、漢方的な分類では、生理痛は、「血お証」だけではありません。
辛い物やお酒の摂りすぎによる「実熱証」、反対に冷たい物の摂りすぎや身体を冷やしたことによる「実寒証」、過労などが原因になっている「気虚証」、血液の不足がまねく「血虚証」、ストレスが痛みを引き起こす「肝気鬱結証」等々、多種にわたります。
漢方治療では症状の特徴から、それぞれのタイプに分類し、そのタイプの中から更に適した処方を決定していく事が大切です。特に痛みの状態や時期(生理前、生理前半、生理後半など)、悪化条件、好転条件などが重要になります。