VOL.216 慢性膀胱炎
尿路感染症のうち膀胱に生じた細菌感染症のことを膀胱炎といいます。経過の違いにより急性と慢性、基礎疾患の有無により単純性と複雑性に分類されます。また、細菌感染以外にも膀胱炎症状を呈する疾患もあります。急性単純性膀胱炎は、ほとんどの場合、大腸菌が尿道から膀胱に入り込んで起こります。一方、慢性複雑性膀胱炎の場合、何らかの基礎疾患が原因となり、細菌が膀胱内に侵入し、粘膜に炎症を起こすことが多くみられます。症状は、急性膀胱炎とほとんど同じですが、軽い症状のことが多く、自覚症状がない場合もあります。慢性膀胱炎の原因の70%を占めるのは大腸菌ではなく、その他の弱い細菌といわれていますが、大腸菌に比べて、抗菌剤が効きにくいため、繰り返しやすくなります。
80才のA子さん「以前より、膠原病を治療中。膀胱炎の自覚症状は特にないが、検査では、尿中に細菌や血液が混じっている。疲れやすく、手足が冷える。寝つきが悪く、夜中に目が覚める。食後眠くなることが多い。」という症状でした。
基礎疾患により、気血両虚、脾不統血を引き起こしていると考え、帰脾湯の煎じ薬を服用していただき、様子を見ることにしました。三ヶ月ほど服用した後、病院の尿検査で正常になったといわれ、とても嬉しそうな声でお電話をいただきました。
漢方では、膀胱炎の発生の仕組みとして、「湿熱蘊結」「脾腎気虚」「肝鬱気滞」「寒湿阻滞」「血瘀」・・・等々のパターンが在り、それぞれに適応した処方があります。
「膀胱炎だから○○湯」と病名から判断して服用しても、効果がみられることは、ほとんどありません。他の疾患同様、症状や体質を漢方的に判断し、その方に合った漢方薬を服用することが、治療の早道です。