漢方薬通信VOL.229 アトピー性皮膚炎と経皮感作
近年のアトピー性皮膚炎の研究においては、「皮膚のバリア破壊」と「経皮感作」が重要なワードになっています。アトピー性皮膚炎は、環境要因や遺伝的な体質などから、皮膚のバリア機能が低下することにより発症し、アレルゲンや細菌などの異物が入りやすくなるため経皮感作が進み、さらにアレルギー体質が増強するとされています。
これを漢方的に考察すると、アトピー性皮膚炎の発症の根本は、人体の防御作用を担う衛気をはじめとする正気(気・血・津液・精・陰・陽)の不足と考えることができます。つまり、発病の基礎となる正気の不足に、外部環境や食事の不節制、ストレス、過労などの誘因・増悪因子が加わることにより、発症或いは悪化する皮膚疾患ということになります。また、「皮膚は内臓の鏡」といわれますが、漢方でも皮膚の状態は五臓六腑との関わりが深く、特に「肌肉を主る脾」と「皮毛を主る肺」のコンディションが重要になります。
Aちゃんは12才の女の子。「幼少期よりアトピー性皮膚炎で、現在もステロイド軟膏などで治療中。肘裏、膝裏、首、耳などに淡紅色の紅斑と痒みがみられる。疲れやすく、風邪をひきやすい。手足が冷えるが、汗をかきやすい。寒さでお腹を壊すことがある。」といった症状でした。気血両虚で、特に脾や肺の陽気が不足していると考察し、帰耆建中湯を服用していただくことにして、スキンケアの指導もさせていただきました。徐々にステロイド軟膏も不要になり、一年半ほどですっかり落ち着き、漢方治療も卒業です。
当然のことですが、アトピー性皮膚炎に限らず、漢方治療においては、患者さん一人一人の皮膚患部やお身体の状態、悪化条件、随伴症状などから、きちんと治療方針を立てることが大切です。また、同じ患者さんでも治療過程において、その時の状態に合わせた対応が必要になります。是非、一度ご相談下さい。
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