元気堂の漢方薬通信
VOL.63 くり返す膀胱炎
40才の女性。「下腹部に不快感があり、軽度の排尿痛がある。小便は回数が多いが、量が少ない。小便の色は、淡黄か無色透明。下半身が重だるく、冷えると悪化する。以前から、疲れや冷えで膀胱炎になりやすく、他の薬局で『膀胱炎には猪苓湯だよ。』と奨められ、二週間ほど飲んでみたがあまり良くならない。」との事。
症状としては猪苓湯の使用目標の「血尿」も「小便黄赤」も「喉の渇き」もまるで無い。まして「冷えると悪化する」ので、熱を冷ます猪苓湯は使えない。今の膀胱炎の状態を説明し、この方には、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を服用して頂きました。
三日ほどで症状が無くなり、その後、膀胱炎の予防を兼ねて冷えと疲れに良い漢方薬を服用していただいていますが、くり返していた膀胱炎も治まっている様です。
身体も温まってきたせいか、とてもお元気そうです。
漢方では、膀胱炎・尿道炎のような排尿痛・排尿困難を主症状とするものを淋証(りんしょう)といいます。西洋医学でいう淋病を指すものではありません。漢方では淋証をその症状から、弁証論治というシステムを用いて、「寒湿」「湿熱」「気滞」「気虚」「気血両虚」「腎陽虚」「陰虚」「陰虚火旺」「心陰陽両虚」などに分類し、治療方針を決定します。そしてそれに則って、約三十種類ほどの漢方薬を使い分けていきます。「膀胱炎」という病名だけで、漢方薬を決定することはありません。