漢方薬通信VOL.230 月経痛が激しい方の不妊
不妊の漢方相談では、月経について詳しくお聞きします。なかには、激しい月経痛でお困りの方もいらっしゃいます。月経痛は、個人差が大きく、痛みの特徴や強さ、痛みが悪化するタイミングも様々です。お仕事などによるストレスや生活環境の変化、出産の前後などで、痛み方が変化することもあります。
32才のA子さんは、パソコン作業の多いお仕事。二人目不妊のご相談です。「もともと月経痛が激しい。一人目のお子さんを出産してから軽減していたが、徐々に痛みが激しくなってきて、月経開始2日間は1日3回鎮痛剤を服用している。痛みは、温めると軽減する。月経周期は30日、月経期間は6日間で、そのうち多い日は2日間。経血の量は多く、色は黒っぽい。大きめの血塊が多く混じり、血塊の排出が終わると月経痛も治まる。排卵出血することがある。子宮内膜症の既往がある。最近疲れやすく、カゼをひきやすい。」とのことでした。
気滞血瘀に気血両虚・陽虚を兼ねていると考え、芎帰調血飲第一加減を服用していただき、腎陽を補うために鹿茸製剤も併用しました。服用して2ヶ月。激しい月経痛はなくなり、経血の色は明るく、量は普通。血塊は小さいものが少量混じる程度になりました。排卵出血はなく、カゼもひかず、お元気そうです。激しい月経痛はツラいもので、それが軽くなると気持ちもラクになります。不妊の漢方治療としても一歩前進です。
漢方では、激しい月経痛には何らかの原因があると考えます。その原因には、気滞血瘀や気血両虚、寒凝胞宮、湿熱下注、肝腎虚損などがあり、いくつかが重複しているケースもあります。そして、その月経痛の原因は、不妊の原因に直結していることが多いのです。つまり、月経痛の原因を改善することは、妊娠しやすいコンディションに近づけることでもあるのです。そのためには、月経痛の特徴や月経の状態、体質などを見極めて、その方に合った漢方薬をセレクトすることが大切です。月経痛も不妊も、お身体に合った漢方薬で、きめ細かくケアしていきましょう。