漢方薬通信VOL.220 アトピー性皮膚炎の仕組みと漢方治療
現代医学では、アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚のバリア機能が低下しており、外からアレルゲンなどの刺激が入りやすくなり、炎症を引き起こすといわれています。また、皮膚から水分が失われやすくなるため、乾燥しやすくなります。さらに、神経が皮膚の表面に伸びてくるため痒みを感じやすい状態となり、掻くことにより、ますますバリア機能が低下します。また、経皮感作が進みやすくなり、一段とアレルギー体質が強くなってしまいます。
これを漢方的に考察してみると、皮膚のバリア機能の低下は「衛気虚」、乾燥や鱗屑は「血や津液の不足」と考えることができます。アトピー性皮膚炎は、根本原因である正気(気・血・津液)不足に、外部環境による六淫、食事の不節制、ストレス、過労などの誘因・増悪因子が加わることにより、発症或いは悪化する疾患といえます。
現代医学のアトピー性皮膚炎の標準治療では、適切な保湿剤を使ってスキンケアをすることで、皮膚のバリア機能を良い状態に保ち、必要に応じて、ステロイド外用薬や、タクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏などで炎症を抑えるとされています。最近では、新規薬剤の登場などで治療の選択肢も増え、プロアクティブ療法なども推奨されています。
漢方治療では、炎症などが強い場合は、黄連や竜胆、石膏などの清熱薬で、対症療法的に(標治といいます)症状を抑えることもありますが、根本治療としては(本治といいます)黄耆などで気を補い、当帰や地黄などで、血や津液を補うことで、皮膚バリアを改善していくことが基本となります。
治療に当たっては、患部の状態と悪化条件、随伴症状などが重要となり、臨機応変でキメ細やかな対応が必要となります。
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