VOL.86 頭痛 ~その3~
頭痛とは臨床上、様々な疾患でよく見られる自覚症状の一種です。
頭部は人体の最高部に位置し、臓腑、清陽の気は頭に上がり、手足の三陽経及び督脉が巓頂部に会しています。
また、頭部は肝腎の蔵する精血と脾胃の運化による水穀の精微により、絶えず濡養されています。
このように多くの臓腑、経絡、器官が関連しているため、頭痛を引き起こす原因は多岐にわたります。
気候や環境の影響による「風寒」「風熱」「風湿」「暑湿」「実寒」、ストレスによる「肝気鬱結」「肝火上炎」、水分代謝が悪いために生じる「痰飲」、暴飲暴食などによる「胃熱」「食滞」、血液の流れが悪い「瘀血」、過労や睡眠不足が引き起こす「気虚」「陽虚」「血虚」「陰虚」、加齢による「腎虚」などのパターンに分類していきます。
そして、パターンに応じた治療法則を決定し、熟慮した上、漢方薬を決定します。
頭痛に使用する漢方処方は、百種類を越えます。
39才のAさん。
「3年ほど前から、左側頭部を中心に重い痛みが生じる。時に目眩を伴う。ストレス、疲労などによって悪化しやすく、生理前後は特に発症しやすい。疲れやすく、不安、イライラ、耳鳴りがある。目が疲れやすく、肩こりも激しい。睡眠がやや浅い。軟便気味。」との事。
「気血両虚」と「肝鬱気滞」を兼ねていると考え、加味帰脾湯を服用していただきました。
一ヶ月後、月に15~20回ほど服用していた鎮痛剤が、4回になり、その後も次第に頭痛がおきなくなり、「漢方薬って効くんですね。」と喜んでいただけました。
頭痛も他の疾患と同様、症状をきちんと分析して処方を決定することが、治療の早道となります。