漢方薬通信VOL.224 WHO「世界では6人に1人に不妊の影響」
2023年4月、世界保健機構(WHO)は、「世界全体で、成人の6人に1人が不妊を経験している」とする報告書を公表しました。新聞にも掲載されていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。この報告は、1990年から2021年の世界での様々な研究を分析して得られたもので、その有病率に地域間のばらつきはなく、高所得国と中所得国、低所得国で大きな差はなかったそうです。WHOは不妊症を「男性または女性の生殖器系の疾患であり、避妊しない定期的な性交渉を12か月以上続けても妊娠に至らないこと」と定義していて、人々の精神的および心理社会的ウェルネスに影響を与える可能性があるとしています。
不妊の問題は、日本に限ったことではなく世界的に重要な問題で、もちろん女性に限ったことでもなく、誰もが関わるかもしれない身近な問題なのです。
妊娠を希望しているのに、なかなか授からない。そのために、気分が落ち込んだり、悲しくなったり、イライラしてしまったり…。不妊は、ストレスの原因になってしまいます。
一方、ストレスが、不妊の原因になるパターンもあります。ストレスを感じると、漢方でいう五臓のどれもが影響を受けますが、肝が影響を受けて疎泄が失調することがあります。疎泄とは、身体のさまざまな機能がスムーズに行われる働きのことです。疎泄が失調すると、月経周期が早まったり遅れたり、経血量が多くなったり少なくなったり、月経前になるとイライラしやすくなったり胸が張ったり、排卵がスムーズにいかなくなったり、コンディションの乱れにつながります。女性の身体は繊細で、ストレスが月経の不調につながるケースは、珍しいことではありません。ストレスが体調に影響しないように、そして、月経や排卵がスムーズになるように、肝の疎泄を調えることが必要です。
不妊の漢方相談では、月経の状態や体質などをよく見極めて、その方に合った漢方薬をセレクトすることが大切です。お身体に合った漢方薬で、ストレスによる不調を和らげて、妊娠しやすいコンディションに近づけていきましょう。