漢方薬通信VOL.223 アトピー性皮膚炎の遺伝と予防
漢方相談をしていると時々、「アトピーって遺伝するんですか?」というご質問を
受けることがあります。子供が4才になるまでのアトピー性皮膚炎の発症リスクを評価した研究では、両親ともにアレルギー疾患がない場合、アトピー性皮膚炎の発症率が27%だったのに対し、両親のどちらかにアレルギー疾患があると37.9%、両親ともにアレルギー疾患があると50%というデータがあるそうです。
アレルギー疾患をお持ちの方は、ご自分のお子さんが「アトピーになるのではないか?」と心配になるかもしれません。しかし、遺伝的なリスクは、誰のせいでもありませんし、前述したように、両親ともにアレルギー疾患がない場合でも発症します。 一方で、うれしい報告としては、赤ちゃんに正しい保湿をしっかりすることで、アトピー性皮膚炎の発症率を下げることができるという研究結果も出ています。「乾燥しやすい体質」のお子さんほど有効だそうです。
これをさらに、漢方的に考えると、正しい保湿とともに、気・血・津液などの正気を補うことで皮膚バリアを高め、さらに、肌肉に関連する脾胃、皮毛に関連する肺の働きを強めていくことで、アトピー性皮膚炎の発症率を下げることができると考えられます。もちろん、アトピー性皮膚炎は、遺伝的なことだけが原因ではありません。発症原因も増悪因子も多様で複雑です。幼少期以降は、ストレスなども大きく関わります。
実際の漢方治療では、皮膚患部の状態、好発部位、悪化条件、随伴症状、現在までの経過などから、その方のアトピー性皮膚炎の発症の仕組みを考察し、それに合わせた治療方針を立てることが大切です。
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