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元気堂の漢方薬通信

VOL.67 漢方治療の原則

漢方治療の原則に「治病求本(病を治するには必ず本を求む)」という言葉があります。これは、病気を治すためには、必ずその本質を明らかにしなければならないという意味です。カゼだから○○湯、下痢だから○○湯、鼻炎には○○湯、生理痛には○○湯…では、効果は期待できません。その症状がどのような原因で、どのような仕組みで起きているかを考察し、病気の本質を探求することが、漢方治療において大変重要です。

頭痛を例にとってみましょう。

まず、その方の自覚症状をお聞きします。その際、痛む部位、どのような痛みか、随伴症状、悪化する条件、楽になる条件、発症の契機、現在までの経過などを考慮することが大切です。
次に、お聞きした内容から、気候や環境の影響による「風寒」「風熱」「風湿」「暑湿」「実寒」、ストレスによる「肝気鬱結」「肝火上炎」、水分代謝が悪いために生じる「痰飲」、暴飲暴食などによる「胃熱」「食滞」、血液の流れが悪い「お血」、過労や睡眠不足が引き起こす「気虚」「陽虚」「血虚」「陰虚」、加齢による「腎虚」などのパターンに分類していきます。
そして、パターンに応じた治療法則を決定し、熟慮した上、漢方薬を決定します。頭痛に使用する漢方処方は、百種類を越えます。
漢方においては、頭痛だけでなくすべての疾患において、症状をきちんと分析して処方を決定することが、治療の早道となります。

VOL.204 感染症予防と漢方

漢方の聖典といわれる《黄帝内経》には、 次のように記されています。「邪の湊まる所、其の気必ず虚す。」 「邪の在る所、皆不足を為す。」 漢方では、病気が発生したり、悪化したりするかどうかは、 正気と邪気の相互関係によるものと考えています。 正気は、ここでは人体の抗病能力と回復能力を指し、 気、血、津液、精などの総称です。 邪気はウィルスや細菌などをはじめとする様々な発病要因のことをいいます。ここで重要なことは、発病の決定的な要因は、 邪気の存在よりも、人体の正気の強弱であることです。 人体の正気が […]

VOL.109 めまい2

「64才女性、主訴はめまい。回転性ではなく、顔がのぼせて、ふらふらして立っていられない。特に起床時や夕方に発症しやすい。時々、イライラ、不安感や動悸を伴う。手足が冷えやすく、夜間尿一回。首・肩のこりがひどく、腰や膝の痛みもある。食欲はあるが食は細い。」との事。 肝陽上亢と痰濁上擾、腎陽虚を兼ねていると考え、釣藤散と至宝三鞭丸を服用していただくことにしました。 一ヶ月後、一人で歩けるようになり、元気な表情で、お見えになりました。服用を始めて一週間ほどから、症状が緩解してきたそうです。「手足も温まっ […]

VOL.44 にきび

Sさんは23才の女性。「十代の頃はあまりニキビに縁がなかったのに、最近とっても気になる。月経前や旅行、チョコレートなどの摂取で悪化する。月経も不順で手足が冷え、肩こり。最近は寝つきも悪い。」との事。なるほど、顎、頬、額に暗紅色の丘疹がみられます。ストレスなどが原因の「肝気鬱結」と判断し、逍遙散を服用して頂きました。3ヶ月ほどで月経も安定し、ニキビもきれいになりました。 Y君は25才のコンピュータ関係の仕事をしている男性。「過労や食事が偏ると悪化する。汗かきでお腹をこわしやすい。高校生の頃、ニキビ […]

VOL.184 皮膚バリア機能低下とアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、現代医学では、痒みを伴い慢性的に経過する皮膚炎で、皮膚の乾燥とバリア機能異常があり、そこへ様々な刺激やアレルギー反応が加わって生じると考えられています。一方で漢方的に見たその発症の仕組みは、患者さん一人一人少しずつ異なりますが、基本的には、気・血・津液など正気の不足が原因となり、外部環境、ストレス、過労、飲食の不摂生などにより誘発・増悪すると考えられます。 「18才のA君。幼少期からアトピー性皮膚炎と診断され、増悪・緩解を繰り返していたが、4,5ヶ月前から特に悪化した。全身に […]