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元気堂の漢方薬通信

VOL.155 月経前症候群(PMS)

月経前症候群(PMS)は日本産科婦人科学会用語解説集では、「月経前3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するもの。」と定義されています。欧米の診断基準では、主な精神症状として、抑鬱、怒りの爆発、イライラ、不安感、判断力の低下、社会的引きこもりなど、身体症状としては、乳房痛、腹部膨満、頭痛、四肢の浮腫などが挙げられています。

東洋医学では、月経前に限らず、月経周期に伴って現れる諸症状を「月経前後諸症」としています。中でも、精神症状が主の場合を「経行情志異常」といいます。
「39才のAさん。排卵後くらいから月経前までイライラが強い。また月経前に頭痛や耳鳴がする。頭痛はこめかみのあたりの脹痛や重痛が多い。月経前に足が浮腫む。月経が始まると諸症状はなくなる。普段から胃の調子が悪く、やせ形で貧血気味。月経周期は30日で安定している。」とのこと。脾胃虚弱による気血の生成不足から肝の陰血が不足し、疏泄失調から肝気鬱結や肝火上炎を引き起こしていると考え、丹梔逍遙散と香砂六君子湯を服用していただくことにしました。2週間ほどで胃の調子が良くなり、4週間後に来局されたときは、経前のイライラや頭痛も軽度になりました。現在3ヶ月ほど服用していただいていますが、経前の不調はみられず、お元気そうです。

中医婦科学では、「月経前後諸症」において、「経行情志異常」を始め、「経行発熱」「経行頭痛」「経行身痛」「経行泄瀉」「経行吐衄」「経行口糜」「経行風疹塊」「経行眩暈」「経行浮腫」…などの病症を挙げています。それらをさらに証候別に分類し、それに応じた漢方処方が控えています。自己判断ではなく、漢方薬を専門に扱っている所に相談して服用することが大切です。漢方薬を上手に使って、月経時もスッキリ、快適に過ごしましょう。

漢方薬通信VOL.224 WHO「世界では6人に1人に不妊の影響」

 2023年4月、世界保健機構(WHO)は、「世界全体で、成人の6人に1人が不妊を経験している」とする報告書を公表しました。新聞にも掲載されていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。この報告は、1990年から2021年の世界での様々な研究を分析して得られたもので、その有病率に地域間のばらつきはなく、高所得国と中所得国、低所得国で大きな差はなかったそうです。WHOは不妊症を「男性または女性の生殖器系の疾患であり、避妊しない定期的な性交渉を12か月以上続けても妊娠に至らないこと」と定義し […]

VOL.152 産後の不調 ~その2~

28才のAさん、「産後3ヶ月くらいから、目眩、悪心、動悸、後頭部の重痛が起こる。疲労倦怠感が強いのに寝つきが悪く、睡眠が浅い。諸症状は、疲労や目の使いすぎ、ストレスなどで悪化しやすい。食欲が無く、肩こり、腰痛などもみられる。」といった症状でした。出産と授乳により気血を消耗し、心血と脾気が不足したことによって心脾両虚を生じたと考え、帰脾湯を服用していただくことにしました。精血を補い体力を回復させるため、瓊玉膏も併用しました。2週間ほどで、目眩、悪心、動悸、後頭痛が減少し、寝つきも良くなってきました […]

VOL.49 下痢

秋から冬にかけては、食べ物がおいしくなる季節。でも胃腸が弱く、すぐお腹をこわす方は、楽しみも半減です。お腹をしっかりさせて、秋の味覚を満喫しましょう。 漢方では、感染性の下痢を痢疾(りしつ)、その他の一般的な下痢を泄瀉(せっしゃ)として区別しています。泄瀉は、その原因から、 ・冷たいものの摂りすぎや冷えが原因の寒湿泄瀉 ・お酒や辛いものの摂りすぎによる湿熱泄瀉 ・暴飲暴食からの傷食泄瀉 ・胃腸の機能低下に伴う脾虚泄瀉や水飲内停 ・ストレスによって起こる肝鬱泄瀉 ・病が長引くことによって生じるオ阻 […]

VOL.83 不妊 ~その3~

漢方理論において、妊娠とは、子宮等だけではなく、肝・心・脾・肺・腎の五臓や衝脈・任脈などの共同作業によるものであり、中でも最も重要な臓腑は腎です。腎には成長発育、生殖の源となる基本物質が蓄えられていて、これを腎精と呼んでいます。腎精が不足すると生殖機能の低下、不妊、流産しやすい、月経不調、閉経が早まる、ホルモン分泌の異常、老化の早期化などが起こりやすくなると考えられています。そのため、漢方の不妊治療において、腎精を充実させることは必須です。 「35歳の女性。結婚して6年になるが、子供ができない。 […]