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元気堂の漢方薬通信

VOL.176 産後の不調

漢方では、出産後から産褥期までの間に発症する分娩や産褥と関連性のある疾病を「産後病」といいます。漢方の聖典の一つである『金匱要略』でも「婦人産後病脈証并治」として専門的に論述しています。現代の中医婦科学(産婦人科のこと)の文献においても、産後血暈、産後痙証、産後腹痛、産後悪露不絶、産後発熱、産後大便難、産後排尿異常、産後自汗或いは盗汗、産後身痛、缺乳(乳汁不足)、乳汁自出などの記載がみられ、産後病を重要視しています。

39才のAさん、「出産して2ヶ月目。疲れ切っているのに寝つきが悪く、睡眠が浅い。不安感やイライラがある。肩こり、腰痛、耳鳴、四肢の冷えなどを伴う。」といった症状でした。一般的に、産後の身体は、通常の状態とは異なり、出産や授乳により陰血を消耗した「亡血傷津」、胎盤や悪露の残留による「瘀血内阻」、それらに伴い、気や血などの不足や気・血・津液の停滞を生じている「多虚多瘀」という病理的な特徴があります。この方の場合も、出産や授乳などにより「気血両虚」「気滞血瘀」を生じていると考え、産後の常用処方といわれる芎帰調血飲第一加減を服用していただくことにしました。陰血不足による心神失養から、睡眠が不調になっていると考え、瓊玉膏も併用しました。1ヶ月ほどで、疲労倦怠感が減少し、寝つきも良くなってきました。2ヶ月あたりから、瘀血の症状が、あまり見られなくなったので、芎帰調血飲第一加減を帰脾湯に変更、現在は、疲労倦怠感も無く、睡眠もよくとれて、お元気そうです。

妊娠、出産、授乳は、気、血、津液、精などの正気を大いに消耗します。また、気血の不足や不調から、精神的にも不安定になりやすいです。疲れた心身を身体に優しい漢方薬でケアし、元気いっぱいですごしましょう。

 

VOL.147 膝の痛み

膝は、関節の自由度が大きいにも拘わらず、体重の負荷が掛かりやすいため、損傷しやすい部位の一つです。痛みとともに、可動制限や腫れ、水が溜まるなどの症状を伴うことも多くみられます。 「76歳のA子さん、数年前から膝のやや内側が痛む。膝の裏の引きつりを伴うことが多い。夕方になると足の裏が浮腫んだような感覚になる。痛みは、冷えや疲労で悪化しやすい。やや疲れやすく、時に腰痛もあり。食欲正常で温かいものを好む。血糖値が少し高い。」とのこと。  腎陽虚水泛証に陰陽両虚証を兼ねていると考え、牛車腎気丸と桂枝加芍 […]

VOL.203 アトピー性皮膚炎と「証」の併存

東洋医学では、病の症状や過程の分析から、その病状に至った原因やシステムを漢方的に解析することにより、いわゆる「証」を決定し、それを治療の根拠として漢方薬を決定します。 「証」とは、その時点における病気の原因、位置、性質、勢い、人体の抵抗力との力関係を包括しているといえます。このことは、アトピー性皮膚炎に限らず、あらゆる疾患の漢方治療において大変重要です。また、病を構成している「証」は、一つとは限らず、複数のものが混在するケースも少なくありません。 「20才のA君。患部は、ほぼ全身だが、特に腕、足 […]

VOL.103 頭痛4

36才のAさん。 「2年ほど前から、側頭から後頭部にかけて隠痛或いは脹痛を生じ、目眩を伴う。ストレス、疲労などによって悪化しやすく、生理前後は特に発症しやすい。疲れやすく、不安、イライラ、耳鳴がある。緊張しやすく、目が疲れ、首や肩が強ばっている。」との事。 「肝気鬱結」と「気血両虚」を兼ねていると考え、逍遙散と十全大補湯を服用していただきました。 一ヶ月ほどで、次第に頭痛が起こらなくなりました。一日おきに服用していた鎮痛剤もほとんど不要になり、「漢方薬って効くんですね。」と喜んでいただけました。 […]

VOL.63 くり返す膀胱炎

40才の女性。「下腹部に不快感があり、軽度の排尿痛がある。小便は回数が多いが、量が少ない。小便の色は、淡黄か無色透明。下半身が重だるく、冷えると悪化する。以前から、疲れや冷えで膀胱炎になりやすく、他の薬局で『膀胱炎には猪苓湯だよ。』と奨められ、二週間ほど飲んでみたがあまり良くならない。」との事。 症状としては猪苓湯の使用目標の「血尿」も「小便黄赤」も「喉の渇き」もまるで無い。まして「冷えると悪化する」ので、熱を冷ます猪苓湯は使えない。今の膀胱炎の状態を説明し、この方には、当帰芍薬散(とうきしゃく […]