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元気堂の漢方薬通信

VOL.177 長引く咳 ~その2~

漢方では咳嗽は肺の宣発・粛降機能が失調し、肺気が上逆することによって発症すると考えています。急性のものは、気温などの環境の急激な変化や煙やホコリなどの身体への侵入を中心に考察し、一方、慢性のものは、五臓六腑などの不調が肺に影響を及ぼしていると考えます。
43歳のA子さん、「1ヶ月くらい咳と痰が止まらない。痰の量は多くない。感冒に罹りやすく、そのたびに、同じような症状が長引く。明け方や運動後、冷たい飲食物の摂取などで悪化しやすい。寒がりで手足が冷えやすい。温かい飲み物を好む。」といった症状でした。
「脾肺陽虚」と判断し、四逆湯と医王湯を服用していただきました。「2週間ほどで咳も止まり、体力も回復してきました。」とうれしいお電話を頂戴しました。その後、同処方を継続、「カゼもひきにくくなり、今年は花粉症も楽でした。」とお元気そうです。
慢性の咳嗽に関係する臓腑は、主に肺・脾・腎・肝であり、口渇や痰の有無、痰の状態、疲労倦怠感、汗、食欲、便通などの状態から治療法を決定していきます。倦怠感が強く、過労により悪化する「肺気虚」、冷えが原因の「肺陽虚」、肺の乾燥による「肺陰虚」、水液代謝の失調による「痰湿蘊肺」、肺に熱がこもっている「肺熱」、ストレスの影響による「肝火犯肺」・・・・・等々のパターンに分類し、さらに詳細に弁証した上、薬方を決定します。他の疾患と同様、主訴、悪化条件、好転条件を明確にして、漢方的に鑑別することが治療の早道です。

VOL.147 膝の痛み

膝は、関節の自由度が大きいにも拘わらず、体重の負荷が掛かりやすいため、損傷しやすい部位の一つです。痛みとともに、可動制限や腫れ、水が溜まるなどの症状を伴うことも多くみられます。 「76歳のA子さん、数年前から膝のやや内側が痛む。膝の裏の引きつりを伴うことが多い。夕方になると足の裏が浮腫んだような感覚になる。痛みは、冷えや疲労で悪化しやすい。やや疲れやすく、時に腰痛もあり。食欲正常で温かいものを好む。血糖値が少し高い。」とのこと。  腎陽虚水泛証に陰陽両虚証を兼ねていると考え、牛車腎気丸と桂枝加芍 […]

VOL.36 アトピー性皮膚炎

当薬局で最近、最も多いご相談が、「アトピー性皮膚炎」です。 「3歳の女の子。首から下全体に淡紅色~暗紅色の苔蘚化、乾燥した病変がみられる。お腹や背中などの体幹部が顕著。入浴や布団の中などで暖まると痒みが増す。食が細く、好き嫌いが多い。お菓子やジュース類が好き。便秘や下痢はみられない。病院では、抗アレルギーの飲み薬とステロイドの塗り薬を処方されているが、一進一退。」との事でした。 胃腸が弱く消化能力が十分でないためアレルギーを引き起こしやすい『脾虚』のタイプと判断し、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうと […]

VOL.108 更年期障害3

更年期障害は、漢方では経断前後諸症などと称し、閉経前後に腎精(ホルモンと考えるとわかりやすいです。)が急速に減少することにより、精神活動の要である「心」、自律神経と関わりの深い「肝」、決断力や快適な睡眠を生み出す「胆」などに影響を及ぼすことによって起こる身体のバランスの失調と考えています。腎精の消耗は閉経だけでなく、過労や不摂生などでもおこりますので、年齢に関係なく更年期のような症状がおこることもあります。 「50才の女性、月経周期が不安定になりだしてから、耳鳴、偏頭痛、焦燥感がみられるようにな […]

VOL.181 不妊と卵巣年齢

漢方では、不妊のことを「不孕(ふよう)」といいます。不孕の漢方相談にみえる方の多くは、不妊クリニックでの治療も行っています。なかには、「卵巣年齢は○才だそうです。」と話される方もいらっしゃいます。卵巣年齢の指標になるのはAMH(抗ミュラーホルモン)といって、卵巣の中に残っている卵子の数の目安となる数値です。卵子の質の指標ではないので、妊娠率と一致するものではありません。 「35歳、結婚して5年の主婦の方。顕微授精を2回行ったが妊娠に至らず、卵巣年齢は45歳と言われた。」すっかり落ち込んで、「私に […]