漢方薬通信VOL.231 自家感作性皮膚炎
自家感作性皮膚炎は、貨幣状湿疹、アトピー性皮膚炎、鬱滞性皮膚炎、接触性皮膚炎などの原発巣があり、増悪や掻破行為により内在性のアレルギー反応を起こし、痒みを伴う小丘疹や膿疱が全身に多発する疾患です。症状は四肢や体幹、顔面に対称性にみられ、原発巣は下腿の皮疹であることが多いです。原発巣の治療をすることにより、自家感作性皮膚炎の症状も緩和するとされています。
漢方では「濁瘡」と称し、素体不足に湿熱、血熱、風熱などが侵襲したものと考えて治療します。
A君は19才、「幼少期から鼻炎などのアレルギー症状があり、17才頃からアトピー性皮膚炎を発症。外用治療などで落ち着いていたが、下腿の病巣が悪化し、掻いていたところ、顔や腕に小丘疹が多発。皮膚科にて自家感作性皮膚炎と診断された。下肢はアトピー性皮膚炎の症状が主で、褐色の紅斑が広い範囲にみられる。睡眠中に汗をかいたり、疲労によって痒くなりやすい。暑がりで、汗をかきやすいが、手足が冷える。食欲、二便は正常。時々、お腹が張る。」とのことでした。患部の炎症は、強くないことから、素体不足を主に治療することとし、帰耆建中湯と瓊玉膏を服用していただき、スキンケアの指導もさせていただきました。2ヶ月ほどで、顔や腕の症状は無くなり、下肢の病巣も改善してきたので、同じ処方を継続。アトピー性皮膚炎も軽症だったせいか、8ヶ月ほどで、下肢もすっかり、きれいになりました。漢方薬も卒業です。
当然ですが、自家感作性皮膚炎を引き起こさないためには、原発巣の皮膚炎を悪化させないことが重要です。漢方薬で気、血、津液などの正気を補うことにより素体不足に対処し、皮膚バリア等の強化やアレルギー反応の調整をすることは、有効な治療の一つといえます。