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元気堂の漢方薬通信

VOL.145 産後の不調

38才のAさん、「二人目のお子さんを出産して二ヶ月目。疲労倦怠感が強く、肩や腕が痛い。疲れ切っているのに寝つきが悪い。不安感がとれない。いつも落ち着きが無くソワソワしてしまう。動悸、眩暈、目のかすみ、耳鳴などを伴う。
 手足がほてり、喉が渇きやすい。」といった症状でした。産後の常用処方といわれる「芎帰調血飲第一加減」も考えましたが、気血の損耗が甚大で、特に心血虚が明顕なので、人参養栄湯と瓊玉膏を併用していただきました。一ヶ月ほどで、疲労倦怠感が減少し、寝つきも良くなってきました。その後、二ヶ月ほど服用し、すっかり元気になりました。
 漢方では、出産後から産褥期までの間に発症する、分娩や産褥と関連性のある疾病を「産後病」といいます。漢方の聖典の一つである『金匱要略』でも「婦人産後病脈証并治」として専門的に論述しています。現代の中医婦科学(産婦人科のこと)の文献においても、産後血暈、産後痙証、産後腹痛、産後悪露不絶、産後発熱、産後大便難、産後排尿異常、産後自汗或いは盗汗、産後身痛、缺乳(乳汁不足)、乳汁自出などの記載がみられ、産後病を重要視しています。
 産後の身体は、通常の状態とは異なり、出産や授乳により陰血を消耗した「亡血傷津」、胎盤や悪露の残留による「瘀血内阻」、それらに伴い気や血などの不足や気・血・津液の停滞を生じている「多虚多瘀」という病理的な特徴があります。
 漢方治療を行うにあたり、これらのことを念頭におくことが大切です。また、気血の不足や不調から、感染症にかかりやすかったり、精神的に不安定になりやすくなったりします。産後の疲れた心身を身体に優しい漢方薬で癒してあげましょう。

VOL.56 月経不順

漢方では、月経を一定の規律をもった周期的な子宮からの出血と定義し、月経周期が21日以下のものを経行先期、35日以上のものを経行後期、短縮したり延長したりして不規則なことを経行先後無定期と称して分類しています。 さらに、随伴症状や体質などを考慮し、「血熱」「陰虚火旺」「肝気欝結」「肝火上炎」「気虚」「血虚」「陽虚」「陰虚」「気血両虚」「腎気不固」「血ォ」「実寒」等々に分類し、約六十種類ほどの薬方を使い分けていきます。 33才のAさんは「月経周期が28日から60日くらいで、一定しない。ストレスや冷え […]

VOL.32 生理痛

生理痛は、漢方では、「経行腹痛」「痛経」等ともいい、月経期或いは月経前後に、下腹部に耐え難い痛みが生じる事をいいます。劇痛が甚だしければ、昏厥に至ることもあり、生理痛の重い女性にとっては、大きな悩みのタネです。また、比較的、漢方薬がよく使われている疾患の一つですが、思ったほど効果が上がっていないのが現状です。 その理由は、使われているのが、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)に代表される血液の流れを良くする活血剤ばかりだからです。活血剤は、血液の流れが滞っていることによって痛みを生じる『血オ証』に […]

VOL.177 長引く咳 ~その2~

漢方では咳嗽は肺の宣発・粛降機能が失調し、肺気が上逆することによって発症すると考えています。急性のものは、気温などの環境の急激な変化や煙やホコリなどの身体への侵入を中心に考察し、一方、慢性のものは、五臓六腑などの不調が肺に影響を及ぼしていると考えます。 43歳のA子さん、「1ヶ月くらい咳と痰が止まらない。痰の量は多くない。感冒に罹りやすく、そのたびに、同じような症状が長引く。明け方や運動後、冷たい飲食物の摂取などで悪化しやすい。寒がりで手足が冷えやすい。温かい飲み物を好む。」といった症状でした。 […]

VOL.151 生理痛 ~その6~

中医婦科学によると生理痛は、「痛経」或いは「経行腹痛」と呼ばれ、「月経期或いはその前後に、周期に応じて出現する下腹部や腰部の疼痛のこと。重症では劇痛となり、甚だしければ昏厥に至ることもある。」と定義されています。 今から約千四百年前の漢方の古典である『諸病源候論』には、「月経来潮時の腹痛は、気や血を労傷することにより身体が虚衰し、そこへ風冷の気が侵襲し胞絡に侵入して、衝脈、任脈、太陽小腸経、少陰心経を損傷して発症する。」とあり、生理痛の漢方治療の基礎となっています。 28歳の会社員の方、「生理の […]