元気堂の漢方薬通信
VOL.144 耳鳴~その2~
耳鳴とは、実際には音がしていないのにも関わらず、何かが聞こえるように感じる現象をいいます。単側の耳に起きる場合もあるし、両耳に発症する場合もあります。
漢方では、耳は臓腑でいうと特に肝胆、脾、腎と関連しているといわれ、耳鳴は、ストレスや過労、老化、食事などの不摂生、身体虚弱、発熱性疾患、上気道炎などが耳鳴の原因とされています。
76才の女性、「両耳に発症する耳鳴。セミの鳴き声のような音が持続する。左が特にひどい。疲れたときや夕方に悪化しやすい。普段からストレスが多い。下肢が冷えて重だるい。肩こり、腰痛がある。」との事でした。
「腎陽虚」に「肝気鬱結」を伴うと判断し、腎気丸と逍遙散を服用していただくことにしました。二週間ほどで、耳鳴りの音が小さくなったとうれしい御報告をいただき、その後も悪化、緩解を繰り返しましたが、一年ほどで、ほとんど気にならなくなりました。
一口に「耳鳴」といっても漢方の分類は様々で、ストレスなどの精神刺激による「肝気鬱結」「肝火上炎」「肝陽上亢」、血の流れが悪いことによる「血瘀」、胃腸が弱いことによる「脾胃虚弱」、飲食の不摂生などによる「痰濁上擾」、過労や老化などによる「気血両虚」「腎精虚損」…など、個々の症状、体質によって、多くのパターンが存在するため、治療も千差万別です。耳鳴の発症時の状況、悪化条件、好転条件、随伴症状などから、きちんと判別し、その方に合った治療法及び漢方薬を決定することが治療のカギとなります。