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病名別漢方治療

蕁麻疹

【西洋医学的概念】

1.蕁麻疹とは

皮膚の限局性浮腫で短時間(数分~24時間以内)持続し、跡形もなく消失するものを蕁麻疹といいます。多くは紅斑と瘙痒を伴います。

2.蕁麻疹の症状

突然、境界明瞭な円形、楕円形、地図状のわずかに隆起した膨疹、発赤を生じ、瘙痒を伴います。全身どこにでも発症しますが、摩擦や圧迫されやすい部位に多く見られます。皮膚だけでなく粘膜にも生じることがあり、咽頭部に生じた場合は嗄声や呼吸困難などを引き起こします。

3.蕁麻疹の病態

アレルギー性或いは何らかの誘因による非アレルギー性の機序で、真皮上層(乳頭層および乳頭下層)において、肥満細胞(マスト細胞)からヒスタミンなどの化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が放出されます。それにより、血管拡張による紅斑、血管透過性亢進による浮腫、知覚神経刺激による瘙痒を生じます。

4.蕁麻疹の種類

蕁麻疹は、誘発する原因が不明の特発性蕁麻疹と、誘発する原因が特定できる刺激誘発型蕁麻疹に分けられます。そのうち、特発性蕁麻疹が全体の70%を占めています。

特発性では、毎日のように皮疹が発症し、刺激誘発型の発症頻度は、誘因により様々になります。

【漢方的な概念】

蕁麻疹は、痒みを伴う一過性の限局性膨疹で、扁平に隆起した円形、楕円形、或いは地図状で紅斑様の皮膚病変を特徴とします。皮疹の発生、消退ともに迅速で、再発を繰り返しますが、痕跡を残しません。「風隠疹」「隠疹」「風疹塊」「皮膚風疹」などと称し、歴代の文献では「風疹」「癮疹」「㾦㿔(ばいらい」「風瘙癮疹」「風㾦癗ばいしん」「疫疙瘩えききっとう」「風綹疹ふうりゅうしん」等々、別名が多く見られます。

【蕁麻疹の漢方的な発生原因】

  1. 素体虚弱
  2. 過労
  3. 久病(慢性病)
  4. 睡眠不足
  5. 情志失調(ストレス)
  6. 脾胃虚弱
  7. 飲食の不節制
  8. 外邪(風・寒・湿・熱)の侵襲

【蕁麻疹の漢方的な発生のしくみ】

蕁麻疹の病機(発生のしくみ)は、複雑ですが、発病の基礎となる本は正気の不足による稟賦不耐・気血虚弱・衛外不固などであり、致病条件である標は風を主とする邪気です。つまり、基本病機は、正気不足の上に邪気が乗じた虚実挟雑証となります。

1.気血不足

素体虚弱、或いは過労、久病、睡眠不足などによる気血の損耗、或いは飲食の不節制のため脾胃の機能が失調することによる気血生化の低下などから、気血不足を生じます。衛気が虚すと体表を固摂できず、腠理粗鬆、衛外不固となり、風邪(ふうじゃ)をはじめとする外邪が容易に侵入しやすくなります。また、血が不足すると内風を生じやすく、肌膚失養から瘙痒を引き起こします。

2.外邪侵襲

正気の不足に乗じて、風邪を主とする六淫の邪が肌腠に停滞したために、発症します。風邪は「百病の長」といわれ、他の病邪を先導し、風熱相搏、風寒束表などを引き起こします。

3.情志所傷

ストレスによる内傷七情から心経鬱熱や肝気鬱結などを生じ、化火して血分に入り、血熱生風を発症すると瘙痒を引き起こします。

4.飲食不節

辛辣物や肥甘厚味の過食、飲酒過多、魚介類の摂取により腸胃積熱を生じ、皮膚腠理の間に積滞して発症します。また、飲食の不節制により、脾胃の機能失調となると前述の「1.気血不足」を引き起こします。

5.血瘀阻滞

上記1~4の病証のいずれかが長期化することにより、営血が鬱滞し血瘀が引き起こされます。

☆この他、獣虫による傷、花粉などの接触、体内の寄生虫等々により、本病が誘発されることがあります。

【弁証の要点】

外風侵襲では発病は急であり、内風致病では病状は緩慢になります。

気血不足から内風を生じるものは虚証が主であり、心火亢盛や肝火上炎から血熱生風するものは実証が主になります。衛外不固に外邪が侵襲したものは虚実挟雑証です。

治療においては、病態に合わせ、扶正と祛邪のどちらを主体とするか判断することが重要になります。


原因が不明の特発性蕁麻疹が全体の70%を占めていることから、過労やストレスなどによる蕁麻疹が多いことが考えられ、漢方が有効なケースも多く見られる疾患です。

慢性の蕁麻疹でお困りの方は、治療の選択肢の一つとして、是非ご検討下さい。

糖尿病

糖尿病は漢方では「消渇」という病証に相当します。 消渇とは、口渇引飲、消穀善飢、小便頻数量多を主要症状とする病証をいい、さらに口甜、尿甜、身体消痩、小便混濁などもみられます。 口渇引飲は「多飲」、消穀善飢は「多食」、小便頻数量多は「多尿」ということから「三多」、或いは「三消」ともいわれ、更に消痩(体重減少)も含め、「三多一少」などと称されることもあります。 【参考】 参考として日本糖尿病学会の糖尿病の診断基準を見てみましょう。 A 次の①~④のいずれかに該当する場合には『糖尿病型』と判定。 ①早 […]

喘息

喘息とは簡単にまとめると次のようなものを言います。 気管支の息の通りが悪くなり、呼吸が苦しくなって呼吸するたびにヒューヒュー、ゼーゼーという喘鳴をともなう。 この症状が突然に、または突然に近い状態であらわれる。 この症状はしばらくすると自然に、または薬によって消える。 以上のような発作を年に数回、人によっては頻回にくり返す。 ☆漢方では、喘息を「哮喘」といいます。厳密には、「哮証」と「喘証」は別のもので、呼吸が促迫し、喉間に哮鳴があるものを「哮証」、主に呼吸困難のことを「喘証」としていますが、臨 […]

五十肩

西洋医学的概念 1.五十肩(肩関節周囲炎)とは  50才代を中心とした中年以降に、明らかな原因が無く肩の疼痛と可動域制限が生じる疾患で、肩関節周囲組織の加齢性変化により発症するとされています。癒着性関節包炎、凍結肩ともよばれます。 2.肩関節周囲炎の病態  肩関節は、人体の中で最も可動域が広い関節であり、そのため、負担も大きくなります。肩関節を構成している骨、軟骨、靱帯、腱などが老化し、硬くなった関節を酷使すると、周囲の組織に炎症や損傷が発症します。肩の疼痛(肩前方を主とする)により、可動域制限 […]

月経不順 (生理不順)

月経とは月経とは、一定の規律をもった周期的な胞宮(子宮)からの出血のことをいいます。 胞宮とは胞宮は、子宮のことで、他に子臓、子処とも称します。月経と妊娠を直接行う器官です。 正常な月経とは月経周期が26~35日で持続日数は3~7日くらいとされています。 漢方における月経・妊娠の生理機構 月経と五臓の関係:月経の機構には、特に肝・腎・脾の働きが関与しています。 1.月経に対する肝の働き 「肝は疏泄を主る」といい、疏泄作用により血をのびのびと流し、衝脈・任脈といった経絡や胞宮(子宮)にはたらきかけ […]