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元気堂の漢方薬通信

VOL.172 冷えが強いために起こる便秘

Aさんは、22才。知人の薬局さんからのご紹介。
「中学生の頃から少しずつ便秘になり始め、昨年秋から特にひどくなり、時には7日に1回くらいしか排便がない。今まで、麻子仁丸や桂枝加芍薬大黄湯などを服用したことがあるが、腹痛や下痢を発症する。四肢や腹部などが冷えやすく、便秘も冬季に悪化する。ストレスや生理前もひどくなりやすい。お腹が張ることが多い。風邪を引きやすい。」とのこと。陽気の不足と脾虚肝乗を兼ねた便秘と考え、建理湯を服用していただくことにしました。20日ほどして、来局された時には「毎日、便通があります。お腹も痛くありません。」と不思議そうです。現在も服用中ですが、良好なようです。
中医内科学によると「便秘とは、大便が詰まって通じない・排便に時間がかかる・あるいは便意があっても排便が困難であるといった病証である。」と定義されています。便秘の基本病態は大腸の伝導失調ですが、その仕組みは単純ではなく、脾・胃・肝・腎などの大腸以外の臓腑の不調が、大腸の伝導に影響を及ぼしていることも少なくありません。
便秘の漢方治療では、排便の状態や悪化条件、好転条件、随伴症状などから、食事や生活習慣の不節制による熱が原因の「熱秘」ストレスの影響が強い「気秘」過労や腹部の筋力が弱い「気虚秘」大腸の潤いが不足している「血虚秘」や「陰虚秘」冷えが原因の「冷秘」などに分類し、さらに症状、体質を分析して処方を決定していきます。
便秘とはいっても、下剤を服用すればよいという単純なものではなく、きちんと漢方的に鑑別して処方を決定することが、治療の早道となります。

漢方薬通信VOL.225 月経の状態が一定しない方

 不妊の漢方相談では、月経の状態を詳しくお聞きしますが、月経痛や月経の状態が、周期ごとにバラバラで一定しないという方もいらっしゃいます。 「38才のAさん、結婚して4年。月経周期は25~28日、月経期間は5日間で、そのうち多い日は3日間。経血の量はふつうだが、少ない月もある。血塊が混ざることがあるが毎月ではない。月経痛が気にならない月もあるが、痛みが激しい月もあり、痛む時は拍動痛で、冷えで悪化し、鎮痛剤が欠かせない。また、月経前の胸の張りが強かったり、月経の始まり方がスムーズでない月があったりす […]

VOL.132 ガンの補助療法

昨今、ガン治療や抗ガン剤の是非について、様々な書籍や情報があふれています。薬局店頭でも、「ガンには、どんな漢方薬が良いのですか?」といったお問い合わせも少なくありません。お問い合わせの中には、漢方と信じて、あまり裏付けのない高額なサプリメントを服用している例も多く見られます。  当然のことですが、ガンに効果がある漢方薬といっても、一つの処方がすべての患者さんに良いということはありえません。他の疾患同様、患者さんの症状や体質により適応する処方は様々です。  東洋医学には、「扶正袪邪」という原則があ […]

VOL.29 冷え性

『冷え性』は身体および手足が温まらない事を特徴とし、漢方では、「畏寒」「四肢厥冷」「下肢冷」「腰腹冷」などに相当します。 一口に『冷え性』と言っても、その感覚は様々で、手足が冷えて寒がりの人、手足は冷えているのに寒がらない人、ストレスがかかると手足が冷える人、手足は冷えているのに冷たいものを欲しがる人、等々。 漢方においても、個々の症状の特徴から、冷えの原因を「腎陽虚」「脾陽虚」「寒邪」「湿邪」「熱邪内鬱」「衝任虚寒」「肝気鬱結」「痰飲内停」等に分類し、約四十種類の処方を使いわけていきます。 三 […]

VOL.207 ストレスと耳鳴

耳鳴とは 外界に音がないのに、耳の中が鳴っていると自覚するもので、難聴を伴う場合が多くみられます。耳鳴には、当人だけに聞こえる自覚的耳鳴と、増幅すれば他人にも聞こえる他覚的耳鳴とがあります。耳鳴のほとんどは自覚的耳鳴であり、単に耳鳴といった場合にはこの自覚的耳鳴のことを言います。 漢方では、耳鳴は、肝胆、脾胃、腎の不調と関係が深いと考えられており、ストレスなどによる「肝気鬱結」「肝火上炎」「心胆虚怯」、飲食の不摂生などによる「痰濁上擾」、胃腸が弱いことによる「清陽不昇」、過労や老化などによる「気 […]